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最後の望み


Swissは、2004年6月に、「ワンワールドへの加盟中止」の報が流れた時に、残念がる人も言えば喜んだ人もいた。
と言うのは、BAとの提携の他に、ルフトハンザからも買収提案があった。
提携パートナーとしてBAより、やはり同じドイツ語圏と言う事もあって、隣国ルフトハンザを推す声も多く、取締役会でも支持が二分になったとも聞く。
しかし、最終的にはBAとの提携を決めたのだが、その後の道のりは厳しかった。

退任したDose社長の後任には、元ルフトハンザ取締役でドイツ国鉄から迎えたフランツ氏を就いたことで、ルフトハンザとの再交渉が始った。
ワンワールド加盟中止後、スカイチームとも接触をしていたが、本命はルフトハンザだったので、真剣に取り組む様子は無く、逆にエールフランスからSwissの加入は無いとコメントされる程だった。

一方、ルフトハンザ内でのSwissを買収するのには否定的な意見も多かった。
スイス国内の航空需要は少なく、Swiss収益の殆どが長距離線によるハブ輸送になっている。
通常なら長距離輸送は収益率が高いが、9.11や戦争が始れば状況は一転する。
また、同盟キャリアである「オーストリア航空」はSwissair時代に結婚直前まで行って破談になった経緯もあり、同じ同盟仲間になるのを警戒する発言をする程でした。
こういう状況の中、ルフトハンザがSwissを買収するには、欧州域内での覇権を広げるにはSwissの買収が効果的と判断したとされている。

欧州で、長距離線を多く運航しているのは、BA、AF、KL、AZ、そしてSwissになる。同じスターアライアンスのSKやOSも長距離線を運航しているが、規模的(乗入れ先)はSwissの比では無く、ワンワールド入りが消えたことで押さえておきたい意向もあった。

ルフトハンザは、Swissの買収案に際していくつかのプランが作られ、中には完全吸収も検討された模様だが、統合するよりも「スイス」という世界的なブランドとして残す方が、長期的に見て得策と判断された。
最終的には、Swissの株式をルフトハンザ設立する新会社が買い取り、Swissは連結子会社と言う形で、独自に運航を継続する形で、傘下に納める案で話が進められた。

Swissとしても、単独で経営を継続するのは難しいのは周知の事実でもあり、もしルフトハンザとの交渉が妥結できなければ最悪、廃業と言う事態も考えられ、正に最後の望みでもあった。

しかし、安易な結果では、「スイス」国内の株主の理解が得られない。主要な株主は、州政府や、銀行であり、Swissは「スイス」の産業に多く関わっており、舵取りを誤ると大変な事になるので交渉は慎重に進められた。
この頃になると、スイスやドイツの新聞により合併交渉が進んでいるなどと報道されるようになり、一部事実と異なる報道もあったようだが、交渉は進められ、両社は2005年3月13日に交渉について始めて公式に発表した。

この時点では既に内容についてほぼ合意段階まできており、Swissは主要株主とこの案について了承を得るだけとなった。

2005年3月22日、ルフトハンザとSwissのそれぞれの取締役会で、ルフトハンザが、スイスに新会社「エアートラスト」社を設立し、まず同社がSwissの株式を11%を取得し、独占禁止法の適用除外を睨み株式の買い増しを行い49%まで取得した後、乗入れ権の確保交渉などが終わった段階で100%化して、ルフトハンザの完全子会社とする。
運航に関しては引き続き、チューリッヒをハブとした「スイス」のエアラインとして、独自性は尊重され、サービスやマイレージサービスは個々に運営継続されると言う案が承認された。

スターアライアンス入りは2006年春?これによりSwissは、スイス資本からドイツ資本の企業体となり、ルフトハンザグループとして、運航を続け、コードシェアなどの運航提携がこれから始まることになっており、2005年冬スケジュールから段階的に実施された。

また、合意の中に長距離用機材2機をルフトハンザからSwissへ移管するとされており、A330が移管され、ネットワークの拡充が図られる事が予定されていたが、直ぐには実行されず、2006年の10月に2機のA330-200がルフトハンザからSwissへ移籍することになるまで、A300-600RをLTUからチャーターすることになった。

Swissとルフトハンザはサービス体系の統一進め、2005年5月25日よりSwiss欧州路線で実施していた、エコノミークラスでの機内サービスを「無料」に戻すことになった。
これは、ルフトハンザとコードシェアを行うに際して、サービス内容をルフトハンザと同等にする為とされている。

そして、2005年6月2日、名古屋で開催されたスターアライアンス最高経営者会議において、以前より加盟申請があった南アフリカ航空と併せて、Swissのスターアライアンスに加盟することが認められ、今後1年以内にスターアライアンスに正式加盟、サービスを開始することとなった。

さらに2005年10月には、SwissTravelClubを2006年3月末をもってルフトハンザの「Miles & More」に移行することを発表。
当初数年間はSwissTravelClubを存続させる話でしたが、スターアライアンスに加盟しプログラムを共通化させるのであれば、投資効果を考え、加盟に際して統合を行った方が良いとの判断からSTCを早期統合に方針が変わった。
また、2005年のウィンタースケジュールから、UAとのコードシェアが開始されるなど、スターアライアンスメンバーとの提携も進めた。

一方、くすぶり続いていた労使関係を打開すべく、2005年11月に欧州ローカル線の分離をおこなうため、Swiss European Air Linesを設立した。
Avro RJ85/100、Embraer145の運航を同社に移管した。これは旧CrossairとSwissairが一緒になった際に問題になっていた運航乗務員の労働規約に絡む問題解決を図る意味合いが大きい。
分離したと言え、フライトはSwissのままであり、Swiss Europeanに委託していると形態になっていて、キャビンアテンダントは分離されていないので、乗務資格があればSwiss、Swiss Europeanどちらでも乗務する。

スターアライアンス加盟に向け、ソフト・ハード面から準備が進められ、2006年4月に正式にスターアライアンスメンバー17社目として加盟しSwissは新たな船出となった。
2006年6月2日オープンの成田空港第一旅客ターミナルにスターアライアンスメンバーが集結するにあわせて、Swissは第二ターミナルから第一ターミナルへ移動し、ハンドリング会社もJALから変更となった。
またJALと行っていた共同運航も解消し、ANAとの共同運航を開始したが、集客力と言う面ではJALに劣るようだ。

スターアライアンス加盟によって長距離線を中心に業績は上向いてきている。
ルフトハンザの支援もありSwissは2007年に中古ではあるがA330、A340型機を5機追加導入し機材強化を図り、路線拡大により上海への運航を開始した。2008年にはA330-200型をA330-300型へのリプレイスする計画を発表し、収益の高い長距離線の拡大を図っていく方針になった。

一方、欧州地域線ではローコストキャリアとの競争により厳しい状況が続いている。
一部ローカル線から撤退や運航をHelveticなどからのウェットリースにようにしたり、Embraer145を退役させAvro RJ100に機種統一を図りコスト削減に図っおり、Avro RJ100も4発ジェットであり経済性が悪いことから新機種へのリプレイスが計画されている。


ヘルベティック エーデルワイス

ようやく、ルフトハンザの支援があり、収益性も上向いてSwissも成長基盤を整えつつある。
2008年2月には旅行代理店「Kuoni」が保有していた「エーデルワイス」株式 を取得し子会社化した。これは

2001年のONGROUND後の混乱、BAとの駆け引き、最後はルフトハンザグループの一翼として活躍するSwissが、これからどうなるのか?これからも見守りたい。

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