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拡大経営

90年代後半、湾岸戦争のあおりで、航空会社はどこも厳しい状況の中、Swissairは「中立国の航空会社だから安全」と言う噂により、多くの乗客がSwissairに流れ、ちょっとしたバブルのようになっていた。

気をよくした経営者は、この機会に拡大路線に走った。
需要のあまり見込めない路線開設や増便、LOTやTAPポルトガル、南アフリカ航空や海外国営会社の民営化プロセスに乗り出して、入札時にかなり高額を付けたりして、入札ライバルを蹴り落として落札したり、欧州の中心キャリアの位置を狙い、影響力の強いアライアンス「Qualiflyerグループ」を設立したりした。

まるでグローバルキャリアというような羽振りで、あちこちの民営化プロセスに参画してまさに絶頂期でもあった。

しかし、それは幻想にしか過ぎなかったのです。日本のバブルのように泡と消えたのです。
90年代前半から続いたDLとSQとのグローバルエクセレンス提携が終了(これにもSRが提携先をDLからAAに変えようとしたからご破算になったという噂もあった)、さらに合併も噂されていた親密な関係だったオーストリア航空(OS)の株式を同社に無断で買い増ししようとして、OSの反感を買い提携関係を破棄されてしまったのです。
この辺りが破綻へのドアだったのでは無いかと思います。

そして、相次いで出資したフランスのAOMやサベナの赤字・・・
2000年決算は、これまでに無い大赤字を出してしまったのです。この拡大戦略を行った経営陣は結局、辞任においやられ、グループのCEOには、スイスを代表するネッスル社の最高経理責任者のマリオ氏が就いた。

さすがに経理に明るいだけあって、状況をみて驚愕したのだろう。Swissairは債務超過状況だったのです。
すぐさま再建に乗り出し、まずは経営状況を圧迫していたAOMやサベナへの支援打ち切りを両国政府も交えた交渉を進める一方、現金を確保する為にグループのスイスホテルをシンガポールのラッフルズホテルに売却したり、ゲートグルメ社の売却を進めなんとか再生の道を探っていた。

難航したベルギー政府との交渉により7月末にはサベナへの資本投入中止がまとまり、なんとか夏を乗り越えたかと見えた、9月。
ニューヨーク貿易センタービルへ突入する、旅客機・・・9.11米国同時多発テロ。

ドル箱路線の北米路線が米国政府の指示により運航停止。
その後運航を再開したものの利用客の激減してしまい、日増しに現金キャッシュが消えていった。

マリオ氏は、このままではSwissairの再建は無理と判断。2000年9月24に「10月のサマースケジュール終了をもって運航を全てcrossairに引継ぎ、会社を清算する」と発表しました。

9月末には、資本引上げ交渉よりサベナベルギー航空への支援金を支払う約束になっていたのですが、それすら払える状況では無かったのです。このままでは債務不履行となり資産の差し押さえなどされる恐れもあったのです。
そこで考えられたのは、Swissairが保有するグループのCrossair(LX)株式を銀行に売却し、その見返りにcrossairに資金の融資を行い、SwissairはCrossairへ営業権を譲り、Crossairが存続会社になり社名を「swiss airlines」として再出発を図る計画を打ち出したのです。

この時点では、まだswissairの社員ですら経営母体が変わるだけと言う認識しか無く、これでなんとか苦境を乗り切れると思っていたのです。

しかし、10月に入り合意した筈の銀行からの資金入金が無かった。
これにより銀行決済が不可能になり、早い話1回目の不渡りを出したと言うことになった。まだこの時点で事実上の「倒産」と言う報道が世界を駆け巡った。

報道は、ちょうど米国テロの直後とあって、かなり大々的に報じられることとなった。
Swissairは銀行からの資金入金が手続き上の遅れで、翌日には入金されるとのとのことから、問題はないtして運航を継続すると表明した。
しかし、銀行団は表面上は協力する意向であったが、Swissairの経済状況から融資には慎重となっていた。

翌朝、スイスからロンドンヒースロー空港に到着したSwissairのエアバスが空港当局に差押えられてしまった。イギリス当局は銀行からの融資が実行されないと、事前に情報をキャッチしたと言われている。

10月2日になっても銀行からの融資が実行されないことに驚愕したマリオ氏は、これが他に地域に広がり差し押さえとなると、事業継続が出来なくなるのを恐れた。

そして、Swissairは全航空機の保全をするの優先し、同日の12:30PM以降の運航を中止し、運航中の全飛行機をスイスへ戻す決断をした。

>>ON GROUND
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